An Anthology (book)
現 代・美 術 の 外 部 性
藤井 博 作品・集
1970-1991
【解説】
1970年-1991年の第1期と第2期の作品に限定しているが、単なる作品の集合体ではなく、彼自身『新しい作品』でもあると位置づけ、2006年に発表、出版したものである。
全208頁。設置作品111頁が、ほぼ年代順に掲載。
テキストには、中西夏之氏、彦坂尚嘉氏、戸谷成雄氏の作家3人の個性あふれる文章と評論家平井亮一氏の90枚にも及ぶすぐれた論考。また、著者本人の「物-身体-みること」について、という積極的主張をもった文章ともども重厚な思考の頁となっており、合計27頁。残りはその他の文面の構成となっている。
平井 亮一
物質の表面をくぐりぬけてなおわれわれの知覚や認識から逸脱しつつづける、したがってそのつどよみがえりもする、いわばべつの質量の現前とそのひきとめ、ということになろうか。また、そのつど還元されるある究極的な事態のつかの間の出現、この「物質的な視覚」(ポール・ド・マン)にかたちをあたえること、あるいは、隠された質量を震わせかりそめにもせよ物質に変容をもたらすこと。
中西 夏之
その行為は何度も繰り返されてよい。(・・・・中略・・・・)藤井博の行ったことを舞いの人、ダンスをする人のように繰り返しレッスンし、その指示の、譜のような作品・行為の記録と写真を先の人へ、先々の人へ伝えたいものだ。この地上が、原始がそうであったように未だ定まっていないと確認するために。
彦坂 尚嘉
この田村画廊の作品は、そうした奇跡が生み出した、とんでもない傑作であり、名作でした。(・・・・中略・・・・)だからこそ藤井さんの作品を排除することで、「もの派」が成立している。つまり藤井さんの作品は、もの派の外部を形作ったのです。それほどに、おぞましくも美しい独創性のある作品であったのです。
戸谷 成雄
ものと意味の間に身体を差し込みながら、そのまま突っ走る藤井博を見てみたかった。それは、彫刻に囚われた私にはできないことだったからだ。(・・・・中略・・・・)氏もまた、絵画の自明性を「かっこ」にくくり、絵画の外を志向しながらもなお[絵画]の囚われ人であることを知った。
当ホームページでは伝えきれない、鮮明で生々しい作品群の数々。読み応えのある個性あふれる歴史的作家三人による文章。評論家によるすぐれた論考。藤井博本人による、*「もの―身体―みること」についての思考の文章と、是非これからの若い作家たちへの土台となるテキストとして、また藤井博の同世代の作家たちへの新たな創作へのメッセージとして、この作品集を後世に残す事を使命としWEB 極北の表現 藤井博製作委員会一同、自信を持ってお勧め致します。
*「もの―身体―みること」について (解説)
人間精神にとって深い関係性をもつ彼独特な「物の思考」を述べ、日本の「もの―物」を表現またその方法の中心においている「もの派」の可能性と限界性を原理的に批判し、そのことと彼の「物の思考」の仕事との関係性を述べている思考の文章である。
WEB 極北の表現 藤井博製作委員会一同
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